>> 地学研究部「私の研究」一覧へ戻る

 日本の恐竜から始まる研究

真鍋 真
日本(手取層群)と中国(熱河層群)の比較
 私は、石川県白山市桑島や岐阜県高山市荘川町に分布する手取層群という地層から発見された、今から約1億3000万年前(白亜紀前期)の恐竜や爬虫類化石の研究を行っています(図1)。手取層群からは、ティラノサウルス類に分類できる歯や、オヴィラプトロサウルス類またはテリジノサウルス類に分類できる指先の骨が見つかりました(図2)。手取層群とほぼ同じ時代の中国の遼寧省には、熱河層群とよばれる地層が堆積しており、「羽毛恐竜」をはじめとして、白亜紀前期の脊椎動物化石の世界有数の化石産地です。熱河層群からもティラノサウルス類やオヴィラプトロサウルス類、テリジノサウルス類などが発見されており、これらのグループがアジアでは白亜紀前期にすでに枝分かれをして、独自の進化を始めていたことが確かになりました。
図1 左:手取層群の分布域(白色)と桑島:、荘川:、 右:手取層群と熱河層群の層序対比図
手取層群の分布域(白色)と桑島、荘川 手取層群と熱河層群の層序対比図

図2 手取層群から見つかっている恐竜化石

ティラノサウルス類の歯
ティラノサウルス類の歯(長さ:3.5 mm)

オヴィラプトロサウルス類またはテリジノサウルス類の末節骨
オヴィラプトロサウルス類またはテリジノサウルス類の末節骨(スケールバーは10 mm)

石川県白山市教育委員会所蔵 

首が長くなったり、胴が長くなったりする進化
 当時の生態系を知るため、恐竜以外の爬虫類などにも注目しています。岐阜県荘川町で発見された新種の爬虫類にショウカワ・イコイShokawa ikoiがあります(図3左)。ショウカワは推定全長50センチメートルくらいの水生爬虫類です。コリストデラ類の中で、首が長くなったものがいたことはショウカワの発見で明らかになったのですが、その後、中国の熱河層群でも近縁の種が発見されました。また、中国の固有種だと思われていたモンジュロスクスMonjurosuchusというコリストデラ類の化石が、岐阜県や石川県でも確認されるようになりました(図3中)。
 他に私たちが2006年に報告したカガナイアス・ハクサンエンシスKaganaias hakusanensisは、胴体が著しく長くなったトカゲ類で、モササウルス類(海トカゲ竜)に近く、もしかするとヘビにも近いかもしれないと考えられるドリコサウルス類に属します(図3右)。カガナイアスは、ドリコサウルス類としてはもっとも古い化石記録で、ヨーロッパ以外で、また海の地層以外で は初めての報告です。
ショウカワの標本

ショウカワの標本

モンジュロスクスの標本

モンジュロスクスの標本

カガナイアスの標本 CTスキャンによる骨格だけの復元(右)

カガナイアスの標本(左)とCTスキャンによる骨格だけの復元(右)
スケールバーは10 mm

図3 手取層群から見つかっている爬虫類化石

左:ショウカワ復元画(作:北村雄一)
左:ショウカワ復元画(作:北村雄一)

中:モンジュロスクス復元画(作:菊谷詩子)
中:モンジュロスクス復元画(作:菊谷詩子)

右:カガナイアス復元画(作:菊谷詩子)
右:カガナイアス復元画(作:菊谷詩子)

ショウカワは岐阜県高山市教育委員会所蔵、その他の標本は石川県白山市教育委員会所蔵

 近年、脊椎動物進化の骨格の形の意味について、新しい研究分野が発展しつつあります。そのひとつが化石をCTスキャンし、デジタルモデルで構造を生体力学的に解析するものです。植物食恐竜の鳥脚類は、顎を上下に動かして植物を咬むだけではなく、上顎が左右にも動いて植物を効率的にすりつぶしていたことがわかっています(地下1階のヒパクロサウルスHypacrosaurus頭骨ロボット参照)。左右の動きの生体力学的な効果を探るために、大橋智之さん(東大生産研・博士研究員)は、地下1階に展示されているヒパクロサウルスの頭骨をCTスキャンして解析しました(左図)。解析の結果、上顎が左右に動くようになったのは、歯の咬む面積を広げることによる植物食の効率化と関連することが判りました。
 また、カガナイアスのように首や胴の長さが著しく変化したり、手足の長さが著しく変化したりするプロセスについて、形態形成をつかさどる遺伝子のレベルで発生生物学的な研究を、東北大学理学部の田村宏治研究室などと行っています。新しく見つかる化石や、すでに収蔵庫にある化石の形を観察するとともに、形の力学的な意味や、形が作られる遺伝子の背景を学びながら、進化の理解を深めて行きたいと思っています。
ヒパクロサウルス頭骨の3次元モデル

ヒパクロサウルス頭骨の有限要素解析結果の1例
上:ヒパクロサウルス頭骨の3次元モデル
下:ヒパクロサウルス頭骨の有限要素解析結果の1例

展示ポスターはこちらから
真鍋 真(まなべ まこと)

真鍋 真(まなべ まこと)

生命進化史研究グループ

>> 地学研究部「私の研究」一覧へ戻る