>> 植物研究部「私の研究」一覧へ戻る

水草は水環境へどのように適応しているのか?

田中 法生

水草とは・・・
水中で誕生した種子植物の祖先が陸上に進出した後に再び水中に戻った植物群です。
ですから、ちゃんと花も咲きます。
水草はどうして水中で暮らせるの?
トチカガミ科の受粉方法と花粉の進化
トチカガミ科は全てが水草ですが、受粉の方法が、虫媒、風媒、水中媒、花粉水面媒、雄性花水面媒と多様です。DNA情報から進化過程を調べたところ、全植物の中でも珍しい水面媒が、トチカガミ科の中で何度も出現(平行進化)したことがわかりました。さらに花粉の形を観察すると、受粉の方法と花粉の表面の形がよく合って進化していることもわかりました。
とても小さな花粉の形さえ巧みに変えることで、水中での生活を可能にしているのです。
広大な海、点々と広がる川や湖を水草はどのように移動しているの?
海草アマモはどのように移動しているの?
アマモは葉についた種子が海面を流れて移動します。DNA情報を用いて調べると、日本列島沿岸を海流の流れに沿って移動していることがわかりました(右図)。例えば、紀伊半島では黒潮の蛇行によって数キロしか離れていない群落の間でも種子の移動がほとんどないことが示されるなど、海流の動きとアマモの種子の動きが密接に関連していることがわかりました。



海草コアマモ-日本とヨーロッパの複雑な関係
コアマモは、サハリンからベトナムまでの浅い海に生育する顕花植物(花の咲く植物)です。左の図の丸印は、各地域のコアマモの遺伝子型を示しています。
DNAを使って調べると、コアマモは、日本の北部に生育するものと南部に生育するものがいて、北部のコアマモは南部のコアマモとよりも、ヨーロッパに分布する別の種類(ノルティ)と類縁が近いことがわかりました。つまり、コアマモの祖先は2グループに分かれ、片方の一部がヨーロッパに分布しているのです。
なぜ北と南に分かれているのか?どのようにヨーロッパに隔離されたのか?さらに研究中です。
どうすれば減っていく水草を守ることができるの?

コシガヤホシクサの野生復帰
コシガヤホシクサは、野生からは絶滅してしまった野生絶滅種です。動物ではトキやコウノトリでの野生復帰事例がありますが、植物での成功例はありません。研究の結果、コシガヤホシクサを長期的に保存する方法や健全な種子をとるための方法が明らかになりました。さらに、元の自生地の環境が地域関係者の協力で実現し、16年ぶりに自生地で種子が発芽し、花が咲き、種子ができました。
この一連の研究や活動が、今後他の植物にも生かされることを期待しています。

>> 植物研究部「私の研究」一覧へ戻る

田中 法生(たなか のりお)

田中 法生(たなか のりお)

多様性解析・保全グループ
展示ポスターはこちらから
このサイトの著作権は国立科学博物館が有します。記載内容を許可なく複製、使用することを禁じます。Copyright(c) 1997-2010 National Museum of Nature Science, Tokyo. All Rights Reserved.