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北海道のレイジンソウ類(キンポウゲ科) ─3 新種の発見

門田 裕一

 北海道は広く、調査の手が及んでいないところが数多く残されています。未調査の地域は全道に及んでいると言っても過言ではないでしょう。そのような北海道の植物相について調べた結果、いくつかの新種を発表してきました。アブラナ科のリシリハタザオArabidopsis umezawana 、キク科のリシリアザミCirsium umezawanum 、ヒダカアザミC. hidakamontanum 、ソラチアオヤギバナSoildago horieanus 、キンポウゲ科のソウヤキンポウゲRanunculus horieanus 、ソウヤレイジンソウ Aconitum soyaenseなどがそれです。
現在キンポウゲ科トリカブト属のレイジンソウ類(レイジンソウ亜属)について調査・研究を継続しています。ここでは道南地方のレイジンソウ類を取り上げてみたいと思います。いずれも、全体が高さ70〜100cm、花は長さ2〜2.5cm、花弁は高さ1cmです。レイジンソウ類は黄白色の花と淡青紫色の花を咲かせる群があり、淡青紫色のものは本州以西に知られているのみでした。(全体が高さ70〜100cm、花は長さ2〜2.5cm、花弁は高さ1cm。)ところが、淡青紫色の花を咲かせる群が北海道に2種発見され、さらに黄白色の花を咲かせる1種が新たに見出されたのです。2010年にはさらに確認のための調査を実施する予定です。

エゾレイジンソウAconitum gigas H. Lév. & Vaniot のタイプ標本
(東京大学総合研究博物館蔵)
採集者はフランス人宣教師、U. フォーリー。
1905(明治38)年の採集。彼の足跡から、産地は北海道虻田郡ニセコ町比羅夫と考えられている。

エゾレイジンソウ(北海道虻田郡ニセコ町ニセコ)
花は黄白色で、花梗に屈毛が生える。上に掲げたAconitum gigas H. Lév. & Vaniotのタイプ標本によく一致する。ニセコ地域から以西の道央〜道北地方に分布する。

オシマレイジンソウ(仮称;北海道島牧郡島牧村大平山)
花が黄白色の点ではエゾレイジンソウに似ているが、花梗に開出毛と腺毛が生える点で異なる。大平山とその周辺のみに知られていたが、2010 年には最近判明した二海郡八雲町雄鉾岳で調査を実施予定。

ハゴロモレイジンソウ(北海道虻田郡ニセコ町昆布岳)
花は淡青紫色で、花梗に屈毛が生える。Aconitum gigas H. Lév. & Vaniot f. bicolor Kadota として、エゾレイジンソウの色変わりの品種としたものを種のランクに上げた。ニセコ町と蘭越町のみに分布する。

ニセコレイジンソウ(新称;北海道虻田郡ニセコ町昆布岳)
花は淡青紫色で、花梗に開出毛が生える。2009 年までの野外調査ではニセコ町の特産と考えられたが、2010 年の北海道大学での標本調査で豊浦町礼文華でも得られていることが分かった。2010 年には礼文華でも調査を実施予定。

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門田 裕一(かどた ゆういち)

門田 裕一(かどた ゆういち)

陸上植物研究グループ
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