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私の最近の研究

平山 良治
ワニツカアザミ(未発表) 土壌とは
土壌とは、地殻の表層において岩石・気候・生物・地形ならびに、土地の年代といった土壌を作る生成因子の総合的な相互作用によって出来たものであり、多少とも腐植・水・空気・生きている生物を含みかつ肥沃土を持った、独立の有機-無機自然体であると近代土壌学を確立させたロシアのドクチャエフは定義している。

土壌は気候とそれに対応する生き物(主に植生)によって作られているために、気候に対応した土壌が出来る。北の亜寒帯からポドゾル、冷温帯の褐色森林土、温帯域の黄褐色森林土、亜熱帯の赤黄色土、熱帯の赤色土それに乾燥地の砂漠土が分布する。一方、気候帯に属さない土壌、日本に広く分布する火山灰性起源の黒ぼく土、ちなみに黒くて手で握った感触がボクボクしているのでこの名前になった。過去の温暖な時期に出来た化石の土壌、泥炭のように水に起因して出来た土壌、沖積地の低地土などがある。

生き物を育てはぐくむ空間で、一般には土壌圏と言うが、その範囲は非常に浅く約1〜2mである。しかし、この薄い土壌圏で地球上の多くの生き物を支えている。 最近の私の研究は、モノリスの作成法と土壌微細形態学という分野である。

1.土壌の標本(土壌モノリス)の作成方と収集 
【日本館展示】

重要な自然史体の一つであるが、土壌標本を収集するということはなく、科学系、自然史系の博物館にはほとんど展示されていない。オランダのISRICという機関では、世界土壌博物館として土壌モノリスを収集している例はある。では土壌は標本でなくて何で表現されるのでしょうか? 土壌中に含まれるいろいろな物質、例えば、鉄や有機物の含まれている量の数字で表現する。土壌を表現するときは数字の一覧表になります。一般の人には受け付けがたいものである。

土壌を身近に感じてもらうには、実物がもっとも良いわけですが、土壌の標本の作り方には確立したものはない。還元的な条件下で出来ている青灰色など特殊な色の付いた土壌に対して、色の保存を考慮した作り方がないのが現状である。さらに、日本の分類されている土壌を土壌型または大土壌グループ(一番上のランク)のものさえ標本化されていない。
種々の検討の結果、日本館の南北に長い日本の自然のコーナに主要土壌27点を、図1の方法で展示した。

剥ぎ取り
剥ぎ取り
調査地の選定を雪中敢行(秋吉台:赤色土)
調査地の選定を雪中敢行(秋吉台:赤色土)
展示の様子
平面研削盤
平面研削盤
A.土壌モノリス作成法
一断面は横幅0.96m縦0.7m程度になる。採取は剥ぎ取り法を用い、薬剤はトマックNS10を使用、裏打ちを不織布で行う。剥ぎ取り後、薬剤パラロイドで内部含浸し、強度を持たせる。表面のぬれ色処理を行う。

B.各気候帯に展示土壌一覧
気候帯:土壌名(通称名)
亜熱帯:赤黄色土(国頭マージ、島尻マージ、ジャーガル)
暖温帯:黄褐色森林土、赤色土、グライ土、灰色低地土、褐色低地土、黒ぼく土
冷温帯:褐色森林土、黒ぼく土(森林性)、アロフェン質黒ぼく土、非アロフェン質黒ぼく土、湿性ポドゾル、赤色土
亜寒帯:ポドゾル、高山草原土、泥炭、未熟火山性土、黒ぼく土、グライ低地土(擬似グライ)

2.土壌微細形態学について
土壌が土壌本来の働きをするようになるためには、数百年から10万年程度の時間を要する。植物や動物がどのように土壌に働きかけ、その貴重な土壌を作り上げているか、私たちの現在の時間では調べることは難しい。そこで、顕微鏡的世界で、その働きを調べる分野が土壌微細形態学である。
研究手法は、土壌を壊さずにプラスチックで固めて薄い薄片にして顕微鏡下で研究する。岩石薄片と異なり、非常に大型の薄片にし、研究に供する。薄片を作製する機械、平面研削盤で、金属加工用に機械を転用している。下田の過去に出来た赤黄色土の下層のサンプルである。粘土皮膜野動物の取った穴など現世に出来たものではなく過去に出来た土壌であることが判明した。
薄片 動物の穴など
薄片 動物の穴など
展示ポスターはこちらから
平山 良治(ひらやま りょうじ)

平山 良治(ひらやま りょうじ)

(退官)

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