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アジアにおける人類の起源・進化・拡散史の解明を目指して−2

現代人の地域的な身体特徴の違いや文化的多様性は、いつどのように生じたのでしょう?そのことにどのような意味があるのでしょう? この難問に答えるため、そして人間についてより深く理解するため、アジア地域における人類の成り立ちについて研究しています。専門は人類化石の形態解析を行う古人類学ですが、考古学・遺伝学・古環境学など様々な分野の研究者と協力して、過去200万年間における総合的な人類史復元を試みることが、最終目標です。

最近の研究1: フロレス原人の研究 (インドネシア・オーストラリアとの国際共同研究)

完成した復元像写真

2003年に発見されて世界を驚かせた、小型人類ホモ・フロレシエンシス(通称 ホビット、またはフロレス原人)の化石について、研究を進めています。現在は、タ イプ標本(LB1号)の頭骨について、マイクロCTデータも用いて、これまでにない詳細な形態学的解析を行っています。身長も脳サイズも猿人でありながら、1万数千年前まで孤島に生き残っていたこの不思議な原人の起源と進化について、重要な手掛かりが得られることが期待されます。

2009年には、当館での展示用に、馬場悠男名誉研究員、坂上和弘研究員とと もに、フロレス原人の実物大生体復元を作成しました。

(写真左:完成した復元像。 左が筆者、右は 馬場名誉研究員)

最近の研究2: 港川人の再検討 (沖縄県立博物館・東京大学との共同研究)

日本館に展示されている港川1号(男性) の全身骨格模型写真

沖縄の港川フィッシャー遺跡から発掘された港川人の人骨化石は、東部アジア地域の旧石器時代ホモ・サピエンス(新人)として、最も保存のよい化石です。長らく縄文人の祖先集団とみなされてきた港川人ですが、本当にそうなのでしょうか? そもそも、港川人はどこからどのようにやってきたのでしょう?

沖縄県立博物館や東京大学などと共同で進めている、港川人再研究の一環として、下顎骨の解析を行った結果、港川人と縄文人の祖先を別に考える必要性が浮かび上がってきま した。これが正しければ、縄文時代以前の日本列島への移住は、複数回あったことになりま す。4万〜1万年前頃の祖先たちの世界(後期旧石器時代)は、私たちが思っている以上に、 動的で変化のある時代だったのかもしれません。

(写真右:日本館に展示されている港川1号(男性) の全身骨格模型)
(写真左下:河野礼子研究員と行った港川1号下顎骨のコンピュータ上での修復(右が修復後))
(写真中下:主成分分析による、港川人と縄文人の下顎骨形態の比較。男女とも共通した、縄文人と異なる特徴があることがわかった。)
(写真右下:港川1号男性の新しい復元画。NHKの特集番組に合わせ、港川人のルーツを、縄文人とは別の古代南方アジア人とする新たな仮説に基づい て、坂上和弘研究員・馬場悠男名誉研究員と共同監修して製作した。(画: 山本耀也))

展示ポスターはこちらから
海部 陽介(かいふ ようすけ)

海部 陽介(かいふ ようすけ)

人類研究部