博物館紀行


Database for Aquatic-vertebrate Science

シリーズ第2回


コペンハーゲン大学動物学博物館

執筆:篠原現人



デンマークの国立大学であるコペンハーゲン大学には動物学博物館という名称をもった施設があります。デンマーク国内で、動物分類学を研究をしているのは、この大学以外にはなく、分類学を学びたい学生は必然的にこの博物館に集まってきます。

建物は研究者や学生の研究室(一〜四階)と展示スペース(五・六階)に大きく区分され、展示は一般のお客さんがみることができます。

展示は見せ方に凝っています。
熱帯域のジオラマでは生きたアリ、砂漠域では生きたネズミといった動物がさりげなく展示されているのには多くの人が驚かされます。視察中特に印象的だったのは、じゅうたんの床に小学生たちが座りながら勉強しているところでした。通路にも福祉国家らしい人に優しい部分が感じられました。

研究については、特に深海魚の分類で世界のトップを走る機関のひとつです。魚類部門には、深海性のアシロ目魚類の研究で著名なニールセン教授がいます。

デンマークには世界に誇れる研究調査船が2隻あります。ひとつは深海底を専門に調査するガラテア号、もうひとつは深海中層域を調査するダナ号です。しかし、船を動かすためには莫大な費用がかかります。どの国でも基礎的な(非商業的な)調査の実施そのものが困難となっており、残念なからデンマークも例外ではありません。

過去の調査活動によって採集された珍しい深海魚標本はコペンハーゲン大学動物学博物館に保管され、今日もなお、世界中の研究者によって利用されています。これらの標本から得られた研究成果は「ガラテア・レポート」、「ダナ・レポート」という有名な報告書を通じて世界中の研究者へ発信されています。ダナ・レポートは有名なビールメーカーのカールスバーグがスポンサーになって出版されていることを今回の旅行ではじめて知り、すこし感動しました(その後ひいきのビールのひとつになりました)。