博物館紀行
Database for Aquatic-vertebrate Science

シリーズ第5回


オーストラリア博物館

シドニーにある同国で最も古い博物館



執筆:篠原現人


シドニーにあるオーストラリア博物館は、同国で最も古い博物館です。魚類学の歴史も古く、現在でもすぐれた研究がおこなわれています。私は2001年1月から3月の真夏の盛りにカサゴ類の調査で同博物館に2ヶ月滞在し、魚類標本の観察や研究者との情報交換を行ってきました。オーストラリア博物館の魚類研究室には3名の研究者がいます(ハゼ、深海魚および稚魚が専門)。研究者の他に、コレクション管理の専門スタッフがいるので、標本はデータベース化も含め極めてよく整理され、海外の研究者にとって非常に重要な研究機関と認識されています。

オ−ストラリア博物館は、その名称から国立の博物館のように思われがちですが、実際はニューサウスウェールズ州立です。オーストラリアには国立の自然史博物館はありません。またオーストラリアには6つの州がありますが、各州や特別区に博物館があり、研究や展示でそれぞれ有名です。特にシドニーとメルボルンはよきライバル同士であることは皆さんご存知と思いますが、博物館同士(オーストラリア博物館とメルボルン博物館)も同様のようです。

オ−ストラリア博物館は旅行者も安心して楽しめる名所になっています。中でも有名なのは、ヒトを含む脊椎動物の骨格の展示でしょう。魚類、鳥類、哺乳類の精巧な標本が並べられ、子供から大人まで楽しめます。ボーン・レンジャーという馬にまたがったヒトの展示(馬も人間も骨)は、1960年台に日本でも人気を博したアメリカのテレビドラマの「ローン・レンジャー」を洒落た展示です。私はこのドラマをみたことがありませんが、ご存知の方には一層楽しい展示かと思います。その他、シーラカンス液浸標本が常設展示してあることも特筆に価するでしょう。アボリジニに関する展示も充実しているので、余暇には魚類学を離れて同国の自然や民族の歴史を楽しく学ぶことができました。