魚さまざま


Database for Aquatic-vertebrate Science

新種を探して13年

執筆:松浦啓一

私が博物館に就職して数年経った頃、つまり20年以上前にインドネシアとオーストラリアの間のインド洋で魚類相調査が行われました。この海域で初めての大がかりな調査でした。当然のことながら新しい知見が次々ともたらされました。調査を組織した研究者は世界の魚類研究者に採集された標本の写真を送り、同定を依頼しました。私はフグ科を担当しました。送られてきた写真を見ると、モヨウフグ属の新種と思われる非常に大きな個体が写っていました。背中側は緑色を帯びた茶色で、多数の青白色点があり、目の周りには環状の褐色線が数本ありました。そこで標本を送ってくれるように頼んだのです。ところが彼から届いた手紙には「調査のためにやとった船の冷蔵庫が故障したので、大型標本を保存しておくことはできなかった。残念ながら貴方が新種と判断した標本を乗組員が海に捨てた」と書いてありました。天を仰いで落胆しました。しかし、海に捨てられた標本はあきらめざるを得ません。それ以来、この新種の標本を探し求めてきました。


同定依頼の手紙