ミクロのエイリアンたちの正体


  ミクソゾアと呼ばれるグループに属する粘液胞子虫類は、これまでに1000種以上が知られており、それらのほとんどがそれぞれ魚類の皮膚や鰓、腎臓、肝臓などの内蔵、さらに脊髄や脳などに寄生する。我々の目に見えるのはシストと呼ばれる数mmの袋で、中には直径10μm(1mmの100分の1)程度の小さな胞子を大量に蓄えている。ところがこの胞子を集めて、別の魚に与えてみても何も起こらない。このミクロなエイリアンたちがいったいどこからやってくるのか、長い間の謎であった。しかし最近になって、サケ科の魚に旋回病という病気を起こす粘液胞子虫の1種を研究していた人達が、ついにイトミミズ類がこの病気の仲立ちをしていることを突き止めた。そればかりか、イトミミズ類から姿を変えて出てきたものは、同じミクソゾアのもう一つのグループである放線胞子虫類の1種だった。同じ種類の生物に二つの名前が付けられていたのである。
 さてこのミクソゾアとはいったい何者だろう。一見原始的な単細胞であることから、かつては原生生物に含まれていた。ところがよく調べてみると、かなり複雑な働きを分担した細胞の集まりであることが解り、現在では多細胞生物として扱われている。胞子には極嚢と呼ばれる器官があり、これがクラゲ類の刺胞にそっくりであるため、刺胞動物の親戚であると言う人達もいる。ごく最近、ミクソゾアの遺伝子を調べた人達は、ミクソゾアは扁形動物などのもっと進化したグループに近いと言っている。海には解らないことがたくさん潜んでいる。このミクロなエイリアン達も未だ住所不定である。

粘液胞子虫類のシスト 鰓にできたミクソボルス Myxobolus sp. のシスト 我々の目に見えるのはこのシストと呼ばれる数mmから数cmの袋で、中には直径10μm(1mmの100分の1)程度の小さな胞子を大量に蓄えている。(撮影:横山 博)


粘液胞子虫類のシスト 魚の筋肉にできたアマミクドア Kudoa amamiensis のシスト (撮影:横山 博)


粘液胞子虫類の1種 ミクソボルス Myxobolus sp. の胞子 (提供:横山 博)(塗沫標本 光学顕微鏡 100倍)


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