観察部位・形質



スカシイカ(外套長29cm)

スカシイカ(外套長54cm)

ヤナギダコ

ヤツデイカ(外套長16cm)
  顎板は立体的な構造をしているため,観察する角度,向きによって,かなり見た目が異なる.また,胃内容からの顎板は,側板や翼状部の外縁が破損しているものが多く,顎板から種を査定するためには,損傷を受けにくい部位・形質を選ぶ必要がある.

1.顎板の大きさと色素沈着,色合い
 顎板は濃褐色から黒に近い色合いであるが,色素の沈着は,先ず吻,嘴刃,冠部に始まり,その後,側板,翼状部へと進む.色素沈着の状態で,取り扱っている顎板が若い個体のものか,成熟個体のものか判断することが出来る.また,小型の顎板で色素沈着がほとんど完了しているものは,小型種の顎板と考えられるし,逆に大きな顎板でも色素沈着の進んでいないものは,大型のイカ類の若い個体の顎板と判断される.

2.側板の形状
 側板を横から観ると,ほぼ長方形あるいは菱形を呈している.長く後方に伸びた低い長方形の側板は八腕形類(タコ類)に特有で,短く先端が鈍い嘴とあわせタコ類の顎板と判断する重要な形質となる.ツツイカ類の側板は,縦に高い菱形,横に低い平行四辺形,後部の上辺に湾入がある斧型など,変異に富む.また,側板前方上部から後方下部に向かって斜めに畝(フォールド)やリッジが走るものも多い.

3.冠部の形状
 左右の側板が合わさり冠部となる.冠部では,接合部が広いU字状あるいは狭いV字状であること,また,冠部の長さ(嘴長と比べる)や,横から観たラインが直線的あるいは緩く曲がることなどが,重要な形質となる.

4.嘴と頤の形状
 嘴刃長と頤長の比率から大きく,嘴刃長>>頤長,嘴刃長>頤長,嘴刃長=頤長,嘴刃長>頤長の4つのタイプに分けられる.また,横から観て,嘴刃が直線的,緩く曲がる,吻が鈎状など重要な形質となる.色素沈着が進んでいない顎板では,嘴刃の延長部が直線的,楔状,あるいは翼に沿って曲がるなども形質として重要である.

5.翼歯と翼刃隆起の形状
 若い個体の下顎では,翼歯が板状で,長方形,ひし形,台形など変化に富む.成長に伴い,翼刃隆起が発達し,翼歯の間に溝が形成される.翼刃隆起の発達の程度や,溝の幅,深さ等が重要な形質となる.また,嘴刃と翼歯のなす角度も重要である.

6.翼状部の形状
 翼状部は色素沈着が最も遅く,薄いので胃内容物の下顎では消失しているものが多いが,翼の張り出し程度や翼の形状で,細い,幅広い,丸いなどが重要な形質となる.

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