一次ソーティングの際の注意



マッコウクジラ第3胃内容 (撮影:田村 力・日本鯨類研究所)
消化段階:2−3
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 このうち,未消化から段階2までは外部形態から通常の分類形質で種の査定が可能である.消化段階3−5については,顎板から種査定を行うことになる.段階6−7のものは,顎板が非常に特徴的な種を除き,種査定は困難である.また,顎板による種査定には,主に下顎を用いるため,段階3−4のものは口球より顎板を取出しておく.(顎板の取出し方・参照)
 胃内容物中の標本は,消化の影響をうけて脆くなっている場合が多い.特に頭足類では,頭部と外套膜の接続部が離脱しやすくなっているので,取出す際に注意する.また,一次ソーティングの際に消化の程度によって,消化段階に分けて記録しておくべきである.それにより,摂餌の回数,一回の摂餌量,摂餌間隔など推定できることがある.参考のため,消化段階区分を下に示す.

未消化:ほとんど消化されていない状態で表皮などが若干消化の影響を受ける.

段階1:外形を保っているが表皮が消失し,鰭,腕先端部は消化の影響をうける.

段階2:外套膜,鰭,頭腕部に分離するが,腕や触腕の吸盤・鈎は残されている.

段階3:外套膜内部の内臓部,腕吸盤は消失.肉質部だけになる.

段階4:口球が腕部から分離する.

段階5:口球から顎板が分離し,上顎と下顎に分かれる.

段階6:顎板の周辺部が破損して,固い部分だけとなる.

段階7:顎板が破片状態になる.


ツチクジラ胃内容,消化段階5−6の資料,丸いものは頭足類あるいは魚類の眼球のレンズ.(撮影:倉持利明)


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