微細藻類のHABs

9. 付着藻類の異常増殖

河川の付着藻類は、水生昆虫や巻き貝、鮎などの植食性の魚の重要な餌となるため、通常は問題になりません。しかし、近年、いくつかの種類が問題を引き起こしています。

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カワシオグサ(カモジシオグサ)

近年、糸状緑藻のカワシオグサ(Cladophora glomerata)の大量発生が全国の河川で問題になっています。カワシオグサの細胞壁は厚いので、水生昆虫や鮎などは食べることが出来ません。また、仮根によって岩にしっかりとくっついているので、通常の増水程度では剥がれることはありません。カワシオグサが繁茂すると鮎は餌である珪藻や藍藻を食べることが出来なくなるので、別の場所に移動してしまいます。

愛知県豊田市矢作川のカワシオグサ

写真: 愛知県豊田市矢作川のカワシオグサ(撮影/提供 豊田市矢作川研究所 内田朝子)

カワシオグサは、砂が強い勢いで流れるような増水があると、砂の粒子によって石から削り落とされます。ダムが存在すると、急な出水が無くなること、砂がダムにたまり出水時に下りてこなくなることなどにより、カワシオグサが繁茂しやすくなると考えられます。そのため、ダムの出水の仕方を工夫するなどの方策が検討されつつあります。

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ディディモ

ニュージーランドや北米、ヨーロッパではディディモ(Didymo)と呼ばれる珪藻(Didymosphenia genimata)が異常増殖し、問題になっています。大量に発生すると、水生昆虫や魚のすみかになる岩場の隙間が無くなってしまうなどの問題が生じます。

ワイオミング州で確認されたDidymo

写真左: アメリカ ワイオミング州で確認されたDidymo(撮影 Sarah Rushforth / 提供 Sarah A. Spaulding)

写真右: 特別大きなものがDidymoであり、周りに写っているものは一般的な珪藻

ディディモ(Didymo)がニュージーランドでは、侵略的外来種として扱われています。日本ではいないと考えられてきましたが、私達の調査によって古くから出現していたことが分かりました。日本では、問題になるような異常増殖はしないようです。

ディディモ(Didymo)に関しては私達が作成した下記のホームページをご覧下さい。

外来珪藻

ディディモは日本では北海道の一部でしか見られず、分布を広げていませんが、一方でディディモと同じように柄(stalk)を持ってマット状になるクチビルケイソウ(Cymbella)やゴンフォネイス(Gomphoneis)の大形の種類が日本各地で異常増殖しています。特に近年急激に分布を広げ問題視されている種類がミズワタクチビルケイソウ(Cymbella janischii)です。本種は外国から輸入した魚の放流伴って分布を広げている可能性が指摘されています。

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