珪藻

 
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現生珪藻Thalassiosira tealata TakanoとCyclotella sp.
T 字形の突起から、コロニーにつくるための粘液糸がでている。


化石珪藻Azpeitia nodulife(r Schmidt)Fryxe(ll 第四紀)と
Nitzschia miocenica Burckle(中新世)珪酸質の2 枚の被殻を表と
裏から撮影した。Azpeitia noduliferの裏からの写真には、
殻の中心と周辺に唇状の突起がみられる。
 珪藻は、珪酸質の2枚の被殻で被われた単細胞の真核藻類で、海洋や陸水域(湖沼や河川)などに幅広く分布しています。殻の表面には、極めて小さな穴が規則的に開いており、幾何学的で美しい模様を形作っています。珪藻の分類は、この殻の模様によって行なわれています。最近では光学顕微鏡に加えて電子顕微鏡を使い、非常に小さな突起の有無や形、配列など殻の微細な構造を重視して分類が行われています。
  珪藻は、母細胞の殻の中に新しい殻を作ることにより、分裂を繰り返して増殖します。娘細胞は、母細胞より小さくなります。分裂を繰り返すことにより、細胞はどんどん小さくなっていきますが、ある時期になると卵と精子が作られたり、細胞がアメーバ状に移動し接合したりして、有性生殖を行います。有性生殖の結果、新たに作られる細胞は増大胞子と呼ばれ、大きな細胞になります。こうして、珪藻は、細胞の大きさを元に戻します。また、おもに沿岸域や湖沼に生息する珪藻のなかには、休眠するか、休眠のための細胞「休眠細胞」を形成して海底や湖底に沈積し、栄養の枯渇や生息環境の悪化に耐える種類もあります。
  深海底コアや世界各地の白亜紀後期の地層から多様な珪藻化石が報告され、この頃にはすでに多様化が進んでいたと考えられています。白亜紀/第三紀境界で起こった小天体の衝突によって大絶滅するものの、新生代に入ると、主要な海洋の一次生産者として繁栄しました。現在の海洋において、珪藻は光合成によって有機物を生合成する一次生産者として重要な役割を果たしており、地球上の光合成の1/4は珪藻によると推定されています。さらに、この発展の過程で、おそらく白亜紀後期から古第三紀にかけて、珪藻は陸水域へも侵入し、その生息域を大きく拡大しました。
  現在の海洋や湖沼、河川に生息する珪藻について、1万以上の種が記載されています。これに化石種を加えると10万種に達すると考えられています。この多様な珪藻化石のなかの100種以上について、地球上への出現とその後の絶滅した年代が明らかにされています。この出現・絶滅年代を利用し、珪藻化石を用いて地層の堆積した時代を推定する方法が確立しています。 現在の南大洋(南極周辺の海域)、赤道周辺の低緯度海域、北極海周辺の高緯度海域、内湾、沿岸の浅海域などで、そこに生息する珪藻の種類が異なります。同じように、地質時代においても、海域によって珪藻の種類は異なっていました。この事実を利用して、地球環境の復元に珪藻化石が利用されています。さらに、湖沼に堆積した地層から珪藻化石を取り出し、陸水域内の環境により、あるいは汽水域と陸水域の間で珪藻の種類が大きく異なることを拠りどころにした環境復元への利用も進んでいます。