プロジェクトメンバー紹介

久保田 好美

氏名 久保田 好美(くぼた よしみ)
所属・役職 国立科学博物館 地学研究部
専門分野 古気候・古海洋学

自己紹介:プロジェクトでの役割・期待すること

このプロジェクトで一つの重要な要素になるのが、3万年前に黒潮がどこをどのくらいの速さで流れていたのか?です。
私の専門は古環境の復元で、これまで東シナ海の古環境について研究を進めてきました。東シナ海南部に深く開いている沖縄トラフの海底堆積物コアを使って、その中に含まれる有孔虫化石から過去の黒潮を復元します。化石として残っている有孔虫の殻を化学的に分析することで、当時の水温を復元することができるのです。また、さらに海洋モデルの専門家と組んで、私の地質学的な証拠からの水温の復元結果を海洋モデルの結果と比較し、復元水温を海洋モデルで再現するには黒潮の速さはどのくらいでなければならないのか、というところまで詰めていきたいと考えています。

5万年〜3万年前は、古環境としても大変面白い時代です。グリーンランドの氷床コアからダンスガード・オシュガーサイクルという千年程度の間隔で起こる急激な気候変動が見つかり、さらにアジアでも中国の鍾乳石からグリーンランドに同調した振幅の大きな気候変動が見つかっています。黒潮は低緯度から高緯度側に熱や塩分を運ぶ重要な役割を果たしています。5万年〜3万年前の黒潮の速さや流量まで推定できれば、急激な気候変動を起こしていた時代の気候学的・海洋学的な背景についてもさらに理解が進むだろうと期待しています。

ふだんの研究活動

私たちの研究は、まずは海底堆積物を採取にいくところから始まり、その試料(コア)をサンプリングして、堆積物(泥)の中から有孔虫を洗い出し、さらに分析する種を顕微鏡下でピッキング、分析項目毎に前処理を行ない、データを出します。

扱うのは小さな化石ですが、小さな有孔虫から大きな地球の気候変動まで語れる、なかなか面白い研究分野だと思います。

© William Crawford, IODP/TAMU

好きなもの・気になるもの

読書

最後にひと言

高校生のときにシュリーマンの「古代への情熱」を読んで、考古学にとても興味を持ちました。結局今の分野を選んだのですが、研究集会では考古学や人類学と分野横断的に議論ができ、大変刺激をうけています。