利根川進博士は1939年9月5日、愛知県の名古屋市に誕生しました。小さいころから負けん気が強く、ほかの人と同じことをすることにまったく興味がありませんでした。利根川博士のノーベル賞受賞の原点は、まさにこの「ほかの人と同じことをしたくない」という性格にありました。ノーベル賞の受賞後に利根川博士は、さまざまな場で次のように発言しています。「何ごとに対しても楽観的、積極的に考えることが大切です。失敗の中にこそ成功へのカギが隠されているのですから」。
 上京した利根川博士は、東京都立日比谷高校に入学しました。高校時代に友だちと連れだって遊んだりすることはありませんでした。
 利根川博士の大好きな科目は化学でした。この「大好き」という単純な理由から、京都大学理学部の化学科に進学することにしました。
大学3年生になると、化学の専門的な勉強や実験が始まりました。しかし、せっかく専門的な学問ができるようになったにもかかわらず、利根川博士の化学に対する夢や情熱は薄れていってしまいました。「自分はいったい何をやればいいのか?」。利根川博士にとって、化学はすでにできあがった学問で、自分には何もすることがないように思えました。大学の4年生になると、卒業研究をするために自分が所属する研究室を選ばなくてはなりません。しかし利根川博士には、興味がもてる研究室がありませんでした。